本書は2019年度に文化庁の助成を受けて行った「表現未満、プロジェクト」の同タイトルの報告書をベースに、記事を増補したり写真を増やしたりした、リニューアル版です。
障害のある人がどうしてもやってしまう行動を表現として認め、「いたいようにいる」ことで社会変革をめざすNPO法人クリエイティブサポートレッツ(静岡県浜松市)。当団体を1年かけて「観光」した、福島県いわき市在住のローカルアクティビスト・小松理虔さんによる旅行記的人文書。専門家でも支援者でもなく、あくまでヨソモノとして障害のある人と「ただ、そこにいる」ことで、自己と他者を理解するための扉が開く。東浩紀、國分功一郎両氏などの哲学のエッセンスも満載。
クリエイティブサポートレッツ+小松理虔 著
四六判 並製 288ページ
【目次】
1 ただ、そこにいる人たち
2 表現未満、表現以上
3 福祉と誤配
4 マジックワードを超えて
5 親亡きあとの福祉
6 支援を離れて生まれる余白
7 オガちゃんの500円
8 親の決定、友人との合意形成
9 支援と共事
10 「いろいろな人たち」の中にぼくもいる
11 はじまりの言葉
12 体験としての障害と福祉
13 いっしょにいる、ともに流れる
14 表現未満、はなぜか社会に広がる
15 オガ台車は問いかける
16 文化センターが壊す当事者「性」
17 散歩は地球を救う
18 オープン・ジャーナリズム
19 受け継がれるゲップ
20 対談 久保田翠(レッツ代表)×小松理虔
【著者紹介・担当編集者より】
認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ
障害や国籍、性差、年齢などあらゆる「ちがい」を乗り越えて人間が本来もっている「生きる力」「自分を表現する力」を見つめていく場を提供し、様々な表現活動を実現するための事業を行い、全ての人々が互いに理解し、分かち合い、共生することのできる社会づくりを行います。
特に、知的に障がいのある人が「自分を表現する力」を身につけ、文化的で豊かな人生を送ることのできる、社会的自立と、その一員として参加できる社会の実現を目指します。そして、知的に障がいのある人も、いきいきと生きていけるまちづくりを行っていきます。
小松理虔(コマツ・リケン)
1979年いわき市小名浜生まれ。ローカルアクティビスト。いわき市小名浜でオルタナティブスペース「UDOK.」を主宰しつつ、いわき海洋調べ隊「うみラボ」では、有志とともに定期的に福島第一原発沖の海洋調査を開催。そのほか、フリーランスの立場で地域の食や医療、福祉など、さまざまな分野の企画や情報発信に携わる。『新復興論』(ゲンロン)で2019年大佛次郎論壇賞を受賞。共著本に『常磐線中心主義 ジョーバンセントリズム』(河出書房新社)、『ローカルメディアの仕事術』(学芸出版社)ほか。
一日中入れ物に石を入れてカチカチ鳴らしている人、飛び跳ねている人、寝ている人、うろうろ歩き回っている人……多くの支援実践で「問題行動」とされることを、レッツでは「表現未満、」と呼んで面白がっている。その人がどうしてもやってしまう行動を表現として認め、いたいようにいることを支える。管理も支配もノルマもない。そんなレッツの世界を旅するうちに、小松理虔さんの価値観が変化していくところがみどころです。